eeldogの鰻犬堂日乗(mankendo diary)

日々のよしなきことどもをつづります。 クリックすると写真が大きくなります。

2017-08

平塚市美術館「リアル(写実)のゆくえ」展

こじんまりとしていたが、充実した良い企画展だった。
http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/20162005_00001.html

個人的にみるべきものと思ったのは、
まずは、五姓田義松の母にかかわる3作品。
「五姓田一家之図」では、家族の肖像。
「母勢子像」は、なぜか、写真家・牛腸茂雄の母のポートレイトを思い出した。
http://storage.brisees.com/BK120424_3.jpg の左ページ。
「母勢子像」の後に「老母図」を見ると、胸が絞めつけられる。
この3作品を続けて見られるだけで、ここに来る意味があると思う。

石川寅治「浜辺に立つ少女たち」は、朝日で大西若人記者が書いていたが、植田正治とそのまま重なるような作品だった。

岸田劉生は「壺」が面白い。少し左側から離れ気味にみると、非常に立体感がある。「冬枯れの道路」は、竹橋の近代美術館に似た作品「道路と土手と塀」と比べると、路面の「盛り上がり感」ではちょっと及ばないかも。
というか「道路と土手と塀」は、生で見ると不思議な立体感があって、独特のものだと思うが、遠近感が狂っている気もする。
「壺」の絵は中央左寄りに、壺の曲面に光が当たってハイライトが白く塗られている。
近づきすぎると、そのハイライトの部分がどうしても白い絵の具に見えてくる瞬間がある。
なので、そう見えない距離に離れて見ていると、壺の曲面がよりリアルに感じられてくる。
作品自体は、細密描写というほどのものではないし、なんとなく形にゆがみがあるようにも思えるが、不思議な生々しさがあって、それは「道路と土手と塀」のも通ずるところがある。

小絲源太郎「けしの花」は、これも国立近代美術館に似たような作品があるなと思ったら「惜春賦」という作品で、これも好きである。

思いもかけず長谷川潾二郎の作品もあって、片方のひげが結局描かれなかった「猫」をみて、うれしくなった。

ぐっと、最近に近くなって、犬塚勉「梅雨の晴れ間」はやはり傑作ではないかと思う。http://inzk.net/an/p5/
ちょっと前にテレビ東京「美の巨人たち」でとりあげたばかりだったので、俺も含めて作品前は込み合っていた。
もう一つの「林の方へ」も、じっくり見ていると引き込まれる作品だった。
「梅雨の晴れ間」をある距離から(=筆の刷毛目が絵にとけこむ距離)じっと見ていると、不思議な現実感があらわれてくる。
その現実感は、自分が今からその絵のなかの茂みに向かって歩いていき、右に曲がっていくというような実感である。
というか、今回の写実特集では、写「真」的細密さというよりも、写「実」=実感を写すという意味(そういう意味の言葉でもないようなのだが)で、作品が集められているように思った。
というのは写実主義-リアリズムの定義を見ると「主観を交えず客観的に描写」とある。
しかし実感とは、客観というよりは主観そのものでもある。となると、西欧的写実と、ここにあるような写実とは、どうもかなり方向性が違うのではないか。そんなことを考えたりした。

最後の最後に、水野暁「The Volcano-大地と距離について/浅間山」がデデーンと鎮座ましましていた。
http://saihodo.com/exhibition/2016/mizuno_16.html
そうとうにサイズの大きな作品なのだが、浅間山の大きさ(見たことがないが)がよく感じられるように思った。
その大きさというのは、雄大なものに向かい合うと、近景―中景―遠景のスケール感が狂うような感覚の大きさである。
昔、郷里の霊山という山に向かいあったとき、大きいことは分かるのだが、圧倒されてしまって、どう大きいのか、もうよく分からないという状態になったことを思い出した。
水野暁も故郷の浅間山を描いたそうで、そういうところもなんだか自分に重なるところがあるように思った。

他には高橋由一や高島野十郎のろうそくの灯の絵があったり、見ものはいろいろある。映画監督の伊丹万作(伊丹十三の父)の油絵があったりして驚く。
平塚はちょっと遠いのだが、東京からでも行く価値あると思います。何年か前に見た長谷川潾二郎展も良かったな。
美術館を出たあと、しばらく歩いて高麗山(こまやま)を眺めるのが好きだ。
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