eeldogの鰻犬堂日乗(mankendo diary)

日々のよしなきことどもをつづります。 クリックすると写真が大きくなります。

2017-06

今道友信先生 原子力と倫理

今道先生が亡くなって、なんとも気が沈んでいるが、書いておかなければならないことがあるので、それだけ書いておく。

先生の中心思想に「エコエティカ」がある。講談社学術文庫にわかりやすくまとめられた形で収められている。
このなかで、重大な指摘が三つある(ほんとはもっとあるが)。

ひとつは「目的から行為への三段論法の変化」である。この著書の149ページから多少アレンジして引用する。
古典的三段論法からすると、
・大前提:「目的定立」Aが私に望ましい
・小前提:「手段選択」①Aを実現するための可能な手段がさまざまにあるp,q,r,s,t…
→②その中からもっとも容易で美しいものを選ぶ
・結論:「行為」実行する。p→A

それが現代ではこうなる。
・大前提:「手段確認」われわれはPという力を持っている。
・小前提:「目的選択」①Pという力によって、さまざまなことが可能。
          →②そのなかで、もっとも効果的なものは何か
・結論:「行為」P→a

つまり、かつては目的達成のために手段が選択されたが、現在では手段=Powerが先行して、それをどう使えばいいのかを後で考えるという逆転が起きている。
このもっとも端的な例が原子力である。
つまり、
戦争に勝つための強力な兵器(目的)→そのための核エネルギー(手段)→原爆投下(結論)からはじまったが、平和時にはその莫大なエネルギーをどう使うか。
核エネルギー(手段)→それに見合う目的の発見(目的)→発電(行為)というかたちになった。
あり余る手段(とくにテクノロジー)をどう扱えばいいのかわからない。これが現代を貫く問題のひとつである。そして扱いに失敗したのが原発事故である。

次に、原子力を扱う者の倫理に対する指摘である。これは第6章「火のミュートス」(158ページ)にずばり書かれている。重要な部分を抜書きしてみる。
(火のミュートス=プロメテウス神話を前提として)
「すなわち、今までよりもはるかに道徳的な人間でなければ原子力は使えないと思うのです。私は、原子力のことは何も知りません。しかし、誇り高く、技術者がこの装置ならば絶対に間違いないと、人間の分際でなぜそういうことが言えるのですか。壊れるかもしれないときに、どうしたらいいかということを二重、三重に考えなくてはなりません。災害学と災害処理学がより完全に研究され、十分に整備されなくては、この恐るべき火は使ってはならないのです。
 しかも、原子力の仕事に当たる人は倫理学を一度も勉強したことがない人がほとんどです。それでいいのか(中略)
 熱心に原子力にたずさわり、まじめに研究したり、働いておられる方に、冷酷な言い方になりますが、原子力関係の事故は続発しています。稼動性や施設数に比べて極小の事故だ、と関係者はいうのですが、しかし大事故の可能性はあるし、小事故でも永続的致命性を周囲に及ぼします。しかも、その大部分は、天災ではなく、「人災」と「物災」であります。人間が過失的な存在であること、人間が不完全な、そして自己弁護的な存在であること、それを忘れて、不十分な構えのまま、利益まで得よう、と考えることは非道であります。
(中略)原子炉の事故は、世代を通して近辺の多くの人びとに病害を与えるのです。
(中略)人間の運命を、自己を中心とした三世代くらいの距離で考えていればよかった時代は過ぎました。人間は人類の運命を何百年、何千年の先に向けて、その生き残りの可能性を真剣に考えなくてはならない時代に立っています(後略)」

もうひとつは、この著書では一言しか触れられていないが、「委員会committee」の問題である(40ページ)。巨大パワーの活用、運営、管理は、すでに個人で責任を取れる範囲を超え、しかし一企業だけでは社会的影響力を考えると判断しきれず、必ずある種の「委員会」が発足されるが、しかしその委員会は責任をとる主体になりえるのか。原発事故を見る限り、ほとんどの委員会(官僚、政治家、学者、電力会社、マスコミ等からのメンバーによって構成されていた)は限りなく無責任であり、決して事態収束の主体にはなっていなかった。この部分は、別にノートがあるので今度改めて触れたい。

今道先生はさまざまな面で非常に不器用でもあったようで、その発言の真意が世に理解されていなかったようにも思う。ほんとうはもう少しいろいろな仕事をしていただきたかった。残念です。
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