eeldogの鰻犬堂日乗(mankendo diary)

日々のよしなきことどもをつづります。 クリックすると写真が大きくなります。

2017-06

六田知弘さんとの対話

茂木計一郎氏コレクションの仏頭と写真家・六田知弘さんの写真による「ガンダーラ彫刻と蓮の花」を見に行ったら、六田さんが居られて、いろいろとお話させていただいた。大昔に仕事をご一緒させていただいたので、私の事情も一通り知ってくれています。

・まずは震災以降の我が家の状況を聞かれたので、そのへんの話から始まった。
・震災とはなんであったか自分なりに考えている。しかし被災した当事者でないかぎり(ただし当事者にもそれぞれいろいろな被災のあり方がある)、震災がどうだったかは結局は分からないだろう。阪神大震災のとき、東日本に住んでいた自分は、気の毒には思ったけれどそれがどのようなものなのか分からなかった(=もしくは、報道レベルでのみ分かった、つもりであった)。しかし、今回の震災を体験してはじめて、阪神大震災について具体的に想像することが可能になった(分かったわけではない)。おなじように911の際のアメリカの人の衝撃は、同じようなレベルで「分かっていなかった」ということが、やっと分かった。
・震災後、4月終わりに郷里の海岸沿いに行った。津波の跡を見たが、目の前の光景がどういうことか分からなかった。どうしてこうなったのか、なぜこうならなければならなかったのか、何も分からない。ずっと分からないだろう。実際のところ言葉にすることも出来ない(今のように何かを書いてはいるが)。
・ただし、和歌に詠むということは出来るようだ(NHK出版「震災三十一文字」など)。
溶けた鉄を鋳型に流し込むと鉄製品が出来るように、かたちにならないものを「型」に流し込むと「形」になる。言葉にならないことを定型詩という型に流し込めることによって、はじめて歌という言葉になる。それが自分のそとに表れ出ると、心の中でなにか落ち着く部分があるようだ。
・それにしても、震災の意味、震災についての言葉、表現活動は、10年くらいたたないと実際のところは分からないのではないか

・六田さんは3週間後に被災地に行ったが何も撮れなかったという。
・9ヶ月たって、やり始めたこと。瓦礫のなかに埋もれている様々な物を白バックの上に置き、陰の出ないフラットな光線にして物撮りしている。
・六田さんとしては自分が出来るのは写真撮影だけ、それによって記録すべきものを自分なりに撮影するとしたら、こうなった。
・それらの品々は、3月11日以前は生活のなかでちゃんと意味づけされていた。しかし3月11日以降、それまでの意味が剥ぎ取られ、別の種類の時間が堆積されてきた。http://www.muda-photo.com/topics/index.html#T120517-1
・(このへん俺なりの考えを出して聞いてみた)それは、Richard Avedon “In the American West”的ではないか。その写真集ではさまざまな職種(といえないものもあるが)の人々が白バックの前で撮影されている。白バックのためかそれぞれの個性がむき出しで撮影されている。最小限の肩書き(属性)は記されているが、しかし写真自体はその属性の奥にある存在そのものに肉薄しているようにも思える。
http://www.richardavedon.com/ → ARCHIVE → PORTRAITS → Portfolio: In the American West
・同じように、被災地での瓦礫の物撮りは、それまでの意味を剥ぎ取られており、ものそのもの/things itselfの次元にあるように思う。

・六田さんによれば、この撮影での写真は、もちろん発表のあてもなく、これからどのように進めていくのか、まとまるのかどうかも分からない。やはり10年以上たたないと、やってきたことの意味が分からないだろう。

・帰宅してからさらに自分なりに考えた。それらのものにおいて311以降別の時間が堆積してきたということは、それ以前の時間が無意味になったということでもある。つまり生活のなかで意味づけされていたものが、一瞬にしてまったく無意味になったという恐ろしさでもある。六田さんが撮影している写真は、ご本人の言うとおり一般的な意味で震災の記録と認識されるのかどうか分からないが、はやく見てみたいと強く思った。
※広島の原爆についての石内都さんの仕事を、関連付けて考えることが出来るかもしれない。http://d.hatena.ne.jp/photographica/20120123/1327336383
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