eeldogの鰻犬堂日乗(mankendo diary)

日々のよしなきことどもをつづります。 クリックすると写真が大きくなります。

2017-09

週刊新潮「御用学者と呼ばれて 第3弾」について

まず、学生時代に学んだことを少し書いておきたい。
文化人類学の授業だったが、人間の意志の伝え合いについて考えると、基本的な要素として、code(暗号表=意味の辞書)、media(messageの乗り物)、message(伝えたい内容)、context(文脈)によって構成されると考えられる。
具体的にいうと、2者間A、Bの意味の伝え合いの場合、両者それぞれがcodeを持つ。codeは社会的に共有されている部分と、個人的な部分がある(社会的に共有された部分がないとそもそも意志の疎通が不可能)。そのcodeに則り、伝えたいこと(message)をある手段(media)を通じて、相手に送り届ける。言い換えればmediaとはmessageの乗り物と考えることが出来る。このmessageは相手のcodeによって読み解かれるが、その際、その前後関係/contextによって、codeによる意味の解釈が左右される。
長々書いたが、簡単にいえば、同じmessageを発しても、言い方、その前後関係、発話者等々によって意味はまったく正反対になりえる。
漱石は「I love you」を日本語にすると「月が青い」と翻訳したそうだが、憎からず思っている間柄なら「月が青い」で心は通ずる。しかし漱石と子規が「月が青い」と言い合ったら俳句の話になるだろう。漱石の英語教授の同僚であれば、青いはblueでなくてpaleだろうかとか、そういう話になるだろうという話。

ところで、ここ数号の週刊新潮は、どうかしているのではないかと思うくらいに橋下氏をバッシングしていた。橋下氏は大阪市長選に出ているので、東京に住む自分が何かを言える立場ではない。同様にいくら東京の雑誌が騒いでも、大阪市民267万人のうちの有権者に影響が与えられなければ意味ないだろうに、大阪にも乗り込まずに神楽坂でヒステリックに騒いでいた(誌面で)。例えばこのへんね。
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/backnumber/20111102/
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/backnumber/20111110/
どうもこういう誌面を見ていると、この雑誌の方針はあまり冷静ではなかろう、というよりもヒステリックな傾向があるように思えてくる。
これも読者にとって一種のcontextともいえる。
これを踏まえて、「御用学者と呼ばれて」というタイトルを見ると、政治(御用)とヒステリックさ(新潮)が結びついて、あまりいい気持ちがしない。これまで政治とヒステリックさが結びついて、ろくなことがなかったからね。橋下氏について「ハシズム」などといってファシスト的だといっているが(実際どうかは俺には良く分からない)、そういっている自分たち新潮社はどうなのか、よく考えてみるといいと思う。

さて、前置きが長くなったが、内容を見ていきたい。
・奈良林直氏(北大大学院教授):省エネはいいが、再生可能エネルギーがどの程度、需要をまかなえるか見通しは暗い。
・高木直行氏(東海大教授):再生可能エネルギーは、それだけではまかなえないので化石、原子力に頼り、結局は高くつく。
・澤田哲生氏(東工大助教):核燃料サイクル事業が立ち行かなくなる。
→「高くつく」といっても、福一原発事故処理費用よりは安いだろう。もしくは福一原発事故収束の費用目算はもう出ていて、それよりは安いということか(まだ聞いたことないけど)。一度事故が起きれば取り返しがつかない技術の評価を、金額を基準に判断するのは、もうやめたらどうかと思う。
これまで原発重大事故の可能性は、原子炉1基あたり10億年に1回という計算もあったそうだが、そこまでして事故が起こりにくいと強調してきた理由は、いったん事故が起これば復旧するのが非常に難しく、影響も地域的に広く、時間的にも長くなるので、事故が起こらないという前提でなければ建設できないという事情があったのだろう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB
そのような技術である原子力発電を、いまだに金額で判断するから、御用学者もしくは経団連の犬(←これは今名づけた)と言われるのだろう。
また、核燃料サイクル事業については、ウランを有効活用(プルトニウムを混ぜたMOX燃料→飛散しないはずが飛散)しても、結局は高濃度廃棄物が残るわけで、その解決方法はいまだに確立されていない。すべての原発に関する議論は、廃棄物処理問題をクリアできていないというところですべて行き詰まる。放射性廃棄物の問題を解決しない限り、原発の将来性について語るのは空しいのではなかろうか。原発の将来性は語っても、後の世代の将来に対する迷惑について語らないのは、やはり御用学者の面目躍如というべきか。

・奈良林:スイスの原発に感銘を受けた。20年前にベント系に濾過フィルターを設置し、移動式電源も7台用意、云々。
・高木:そもそも今回のような事故は起きないものと、真剣に考えてこなかった。日本の原子力村には、ものを言いにくい雰囲気があった。
・澤田:規制する側と推進する側が一線を引いて、相互の批判できるようになっていなければならなかった。
→いまさらとってつけたように反省?めいたことを言っても、免罪符にはならない。「20年前に」云々は、日本の原発はある意味20年遅れたレベルだということ。研究者としてそこを認めてから話をすべき。また、事故がないものと考えていて、この体たらく。恥を知るものならこの対談に出す顔はなかろう。顔を出して発言する以上、しょせんは他人事だろう。こういう人が原発に関係しているかと思うと、失敗する理由も良くわかる。「規制側と推進側が一線を引いて」というが、御用学者は、そのインサイダーだったわけで、そう思えば自ら改善すればよかったはず。出来なかったならば、その反省はどこにあるのか。少なくともこの対談上にはない。

・澤田:原発をやめれば、地球温暖化の要因と思われるCo2の問題が解決しない。
→たしかに地球温暖化防止のため、311前は原発が再注目されていた。しかし、Co2を減らす方法は原発稼動だけではないはずで、例えば節電によってエネルギー消費を減らすことによっても実現できる。原発によって今までと同じエネルギー消費を続けるよりは、ライフスタイル自体を改めて、電気消費自体を少なくしたほうが、より無理がないだろう。また、原発は出力調整が難しいそうで(いちいち制御棒を動かすのは大変だろう)、夜間の余った電力の使い道に困っていたので、夜間電力割引やら、揚水発電所を稼動していた。消費量にあわせてこまめに必要量を供給する発電方法があれば、より無駄がなくなる。そこまでいわなくても、発電によるCo2排出よりは、産業部門、運輸部門の排出量のほうがはるかに多い。むりに事故が起きれば甚大な被害をもたらす原発を稼動するよりは、その他の部門で排出を減らしたほうがより無理がないと思える。
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/2009sokuho.pdf

なお、
・澤田:鳩山元首相がCo2を減らすといったばかりにとめるはずだった福一原発を稼動させ続けたという件、本当かどうか未確認だが、大事な指摘ではないかと思う。直接的ソースが見つからないので、これについては保留する。

・奈良林:放射線ホルミシス効果、ある程度の放射線の刺激があったほうが健康が保てる。
→ホルミシス効果は、まだ確証が得られたものではなく、そもそも原子炉工学が専門で、医学とは畑違いである奈良林氏が軽々しく口にすべきことではない。それとも、ホルミシス効果があるのだから、放射性物質をばら撒いてもらったことについて有り難く思え、とでも言いたいのだろうか。まさかそこまでバカではないと思うが。
また、ラジウム温泉で名高い玉川温泉であるが、その周辺が長寿村であったりしたら、ホルミシス効果の傍証にもなるかもしれない。しかし温泉のある仙北市の平均寿命は周辺と比べて別に長いわけではない。
平成17年秋田県平均寿命は77.4歳(男性)、 85.2歳(女性)、仙北市は76.7歳、 85.5歳。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/ckts05/hyo01-02.html

・澤田:私たちに御用学者というレッテルを貼り、原子力は正義か不正義か、1ミリシーべルトか5ミリシーベルトか、という二項対立にばかり追い込んでいたら貧しい議論しか出来ない。
→二項対立に持ち込んできたのは、むしろ反原発運動を妨害するために持ち込まれてきた手段である。具体的には、賛成・反対派に二分したうえで、反対派のなかのエキセントリックな意見をことさらに強調し、反対派自体がとるに足らない意見しか持っていないと思わせるようにしてきたわけで、これが電通方式というらしい@officematsunaga。貧しい議論を仕向けてきた側がいまさらなにを言っているのか、よく分からない人たちである。

細かく言うといろいろあるだろうが、まずはこの辺までとした。冒頭に書いたが、同じ発言内容であっても、発言者、その前後関係によって、受けとめられる意味は大きく変わりうる。もし、この4人が純粋に一般市民を心配していて、しかも自分の発言が届かないことを憂いているなら、一度、組織を離れて発言してみたらどうか。もちろん東電関連会社や公的機関の関連に転職するようなことはせずに。そこまでして伝えたいことであれば、みな聞く耳を持つであろう。
皆さん、優秀な方ばかりのようなので、すぐどこかに仕事は見つかるだろうから、その辺の心配は要らないと思う。
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