eeldogの鰻犬堂日乗(mankendo diary)

日々のよしなきことどもをつづります。 クリックすると写真が大きくなります。

2017-06

古川日出男「馬たちよ、それでも光は無垢で」について

ここにも少し書いたのだが、以下は先日twitterに書いたものをまとめなおしたものです。

昨日、先月の「新潮」7月号を買って古川日出男「馬たちよ、それでも光は無垢で」を読了。たまたま、集英社「すばる」8月号の表紙に『「3・11」と「その後」の小説』(陣野俊史)という見出しをみつけて、その書評を読んでみた。ちなみに陣野氏の書評自体も良いです。
この書評で紹介されていた「馬たちよ、それでも光は無垢で」のあらすじを見て、初めて古川の文を読まねばと思い、新宿まで先月号を探しに行ったのだった(自宅の近くでは先月号の「新潮」は返品済みなので)。わざわざ探してでも読む価値がある「小説」だった。

なぜ、小説に「」(かぎかっこ)をつけているのかといえば、古川の「馬たちよ、…」は小説と、そうでないものの危うい境界線上にあるからだ。しかしやはり小説である、というか積極的な意味で小説でしかあり得ない。
内容的には、(週刊新潮ではむしろ原発擁護的言辞を弄していたあの)新潮社の編集者と、福島県中通り出身の作者が、地震と原発事故の被災地を訪れるという、一種のロードムービー的ドキュメンタリーの趣きがありながら、ある瞬間で小説に変異している(このへんは陣野氏の書評に詳しい)。その瞬間の作者のためらいが真摯であり、美しいとも思う。
※ちなみに新潮社内も、原発についていろいろ立場があるのだろう。新潮45も擁護的な号とそうでない号があったりする。

小説家が真剣に文章に向き合えば、その文章はやはり小説になるであろう。例えばもしそれが随筆になってしまうのであれば、それは随筆家になるのではないかと思う。そういう意味では、ドキュメンタリー的に書き起こされた文章が最終的に小説になっているのは、古川氏が小説家以外のなにものでもないことを示していると思う。
詳細についてはここには書かないが、この「馬たちよ、…」は、とにかく相馬出身の俺には見逃せない小説であった。読むべきものに出会ったというかんじである。

ところでひとつだけ言いたいことがある。
著者は、中世以来、関東北部‐いまの千葉県あたりから城を作っては移転を繰り返した相馬氏の歴史にからめて、原発をあらたな「築城史」に加えているが、たぶんそうではない。
原発は、歴史的に見ればむしろ田村麻呂的な「侵略者側(都人)の作った新たな砦」であろう。相馬市付近に発電所計画が起こったとき、南相馬市、相馬市はかろうじて火力発電所(東北電力)によって対抗したとも言える。それは原発建設の経緯を見れば分かる。
簡単に言えば、貧しく人口も少ない土地で、人が日々の生活に追われているうちに物事が進んで、偉い人たちが「原発は安全でお金も地元に落としてくれる、大変にいいものだ」というのをそのまま信じ込んでしまっていたわけだ。
築城というからには、それを築く主体がある。相馬(と双葉だが、小説に合わせると相馬)側が主体となって積極的に原発を誘致したのであれば、「築城史」の末尾に書き込めなくもないが、そうではなかった。
原発を作った(誘致した)のは、いわき市出身(相馬や双葉郡ではないことに注意)の当時の木村守江知事と、伊達郡出身(福島県中通り、むしろ相馬藩の仇敵wである伊達)の木川田一隆東電社長、そして痴呆議員の偽黄門こと会津地方出身の渡部恒三議員らが主体である。彼らは中央(都)に電気という貢物を鄙から収奪する「貢ぎ取り」であったと考えられる。
歴史を千年ほどさかのぼれば、東北には阿弖流爲(あてるい)という首領がいたのだが、坂上田村麻呂に鎮圧された。その際に築かれたのが胆沢城等である。そして、中世に相馬氏も千葉から流れてきたわけだが(鎌倉から行方郡‐南相馬市近辺を所領として与えられた)、これも収奪者といえなくもない。歴史は繰り返すというべきか。その収奪者が土着化して小大名になり中世~近世まで生き延びたわけだが、今度はあらたな収奪者として東京電力が乗り込んできたわけである。
一方、相馬氏本家は廃藩置県後、今度は北海道に移住したので、歴史的にはたびたび流浪しているのだが、すたれることなく存続している。

古川氏には、このへんの事情も汲んでほしかった。やはり東京電力福島第一原子力発電所が、相馬氏の築城史の流れにあるように読めてしまうのは、勘弁してもらいたい。

と、ここまで長々書いたが、俺の方が誤読してはおるまいな。心配なので、また再読しようと思う。
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