eeldogの鰻犬堂日乗(mankendo diary)

日々のよしなきことどもをつづります。 クリックすると写真が大きくなります。

2017-06

水野忠夫賛江

アクセスログを見ると、「水野忠夫」で検索して見に来る方がちらほら居られる。となればもうちょっと水野先生について書かずにはおられない。

水野先生を知ったのは、西江雅之先生の話からなのか、それともその前に、ブルガーコフについて興味があったのか、今となっては定かではない。西江先生についてもいずれ書かないといけないな。なにしろ尊敬する先生の一人であるから。
しかし、いずれにせよ、同じような時期ではあった。大学2年の頃か。

さて、西江先生から聞いた水野先生の話をしてみる。
むかし、早稲田の学生会館で、分厚いロシア語の原書を読む青年が居たそうな。毎日、そこにいて、しかも確実にページが進んでいる。それを見て、西江先生が声をかけたそうだ。
たしかに、西江先生の専門とするコミュニケーション論のうち、シュールレアリスムに関係する部分がある程度ある。そして、ロシア・アバンギャルド(と一口に言ってしまってよいのかどうか、若干の不安はあるが)の人々が、シュールレアリスムに深くかかわっていたことも事実であるそうだ。
そのへんから、両先生が話し始めたそうだが、それよりもお二人ともお酒が好きという要因があったと思う(この辺は蛇足也)。

さて、何はともあれ、「巨匠とマルガリータ」を苦労して探し出して読んだ以上、水野先生の授業を受けずには済まぬ。しかし、自分は露文ではないので、一般科目として水野先生の授業を受けた。そのときの授業は、ロシアの象徴主義について取り上げていたと思う。このときに出てきた人名は、今は失念したが、昭和初期~戦後間もない頃のキーパーソンであったりしたようで、なかなかに馬鹿にできない、というよりも自分の仕事上ではかなり役に立った(一般的にはあまり役に立たないような気がするが)。

ところで、水野先生の授業を、地味だとか、暇だとか、つまらんとか言っているいるような輩が居るようである(これはインターネット上で検索した話であるが)。俺から言わせれば、だから馬鹿には分からんのだ、というしかない。おそらく水野先生のお弟子さんたちは、ちょっと見には退屈そうな語学をマスターした上で、文学の世界で遊んでいるのだ。俺から見ればみんな天上人である(ちょっと大げさ)。そこまで至らぬものが、いったい何を言うか。馬鹿でも発言できる世の中が空恐ろしいわい。
俺も馬鹿ではあるが、真実偉い人を誉めることだけは欠かさぬつもりだ。そして足を引っ張るつもりは毛頭ない。
というわけで、とりあえずタイトルどおり「水野忠夫賛江」というわけである。

書きながら思い出したが、大江健三郎「小説の方法」を読み、そこからフォルマリズムについて関心を持ち、そこから派生してロシア・アバンギャルドに行き着き、ブルガーコフにたどりついて、水野先生に行き着いたのだな。
この項、さらに書き継ぐべきか。

【追記】
というわけで、久しぶりに「巨匠とマルガリータ」を読んでみた。以前はかなり長い小説だと思ったが、何度か再読するうちに、それほど長さを感じなくなってきたようだ。
俺がすきなのは、最後にピラトとイエスが対話するところだな。

ところで、言語というものは、それを発した人間から切り離されると本来の生命を失うという。文章にされると、なおさら作者の肉声からは遠ざかる。
しかし、文章化されることによって、つまり生身の作者から切り離されることによって、別の生命を持つこともできる。つまり、この作品の場合、ブルガーコフから切り離されたからこそ、著者の没後も生き延びることができ、そして海外で出版され、多くの翻訳も生まれた。
また作中でも、巨匠が原稿を焼く(=切り離す)シーンがあり、それはヴォランドにより復活するのだが、最終的には巨匠の手を離れ、物語世界と一体化してしまう。この辺も作品世界と現実が二重露光されたように思え、物語に厚みを加えているように思う。

最近、言葉の肉体性について考えることがあったのだが、話された言葉が書かれた文章に変換されることによる多くの長所を忘れてしまうところだった。
発話者の死後も言葉が行き続けるということは、やはり素晴らしいことなのだが、あまりに当たり前すぎて、そこを忘れてしまっていた。

「大学之道、在明明徳」というが、この意味は「本当の学問(=大学)とは、明らかに徳であるもの(明徳)を、さらに明らかにしていく。つまり良いものがなぜ良いのか、どのように良いのか、といったことを考えるのである」と聞いたことがある。それを思い出した。
当たり前のもの、当然視しているものの意味・価値、その良さを、改めて見直さないといけないな。
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