eeldogの鰻犬堂日乗(mankendo diary)

日々のよしなきことどもをつづります。 クリックすると写真が大きくなります。

2013-08

「天才ヴィニー・ライリーの復活」もしくは「The Second Return of the Durutti Column」

最近、ドルッティ・コラムばかり聴いているが、リーダーにしてギタリスト、唯一のメンバーであるヴィニー・ライリーがしばらく前に病で倒れていたことを、遅ればせながら知った。
http://cloudbuster.lowlife.jp/2013/01/blog-post.html
http://cloudbuster.lowlife.jp/2013/01/blog-post_5.html
http://cloudbuster.lowlife.jp/2013/01/blog-post_9.html

上記の記事をまとめると、2010年9月に脳梗塞を起こしたが、なんとかギターを弾けるくらい(ただし、ストーンズのリズムギター程度のようだ)に回復したが、2012年に三度目の発作を起こし、ギターが十分に弾けない状態にあるらしい。
この間、一時は家賃も払えぬような困窮状態に陥ったが、ファンからの支援もありなんとか生活を取り戻すことができた。今はリハビリに励んでいるらしい。
彼のギターは唯一無二のものであって、彼より上手いギタリストはいくらでもいるだろうが、誰も彼のように曲を作り、演奏することはできない。
頭のなかには音楽があふれているのに、それをかたちにすることができないのは、どんなにもどかしいだろうか。


「天才ローランド・カークの復活」というレコードがある。名盤の誉れも高いが、なかなかCDで再発されなかった(というか入手できなかった)。
ローランド・カークは天才マルチリードプレーヤーで、一度に3本のサックスを演奏したり、ノンブレス(息継ぎなし・循環呼吸奏法)で40分以上演奏したりと神業を連発していたが、1975年に脳卒中で倒れ、以前のようには演奏できなくなったが、楽器を改造して演奏を続けた(しかし、77年に再度発作を起こし亡くなった)。
このレコードはその時期に発表されたもので、じつは倒れる前の演奏だともいう(が、倒れた後も演奏活動を続けたのには変わりはない)。


Rahsaan Roland Kirk - Theme for the Eulipions


ヴィニー・ライリーも、ローランド・カークのように復活してまた演奏活動を続けてほしい。85年に来日していて、そのライブCDも愛聴しているが、このときはその良さが分からなくて、せっかく東京にいたのに行かなかった。だから今度こそライブを見たい。復活待ってます。
支援の意味も込めてCD買わないと。



The Durutti Column - Sketch For Summer (Domo Arigato)
http://www.youtube.com/watch?v=BBBhGpzHDOU&list=PL2E71AD7914566BCA&index=1
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アンドレアス・グルスキー展

国立新美術館で開催中なので、行ってみた。http://gursky.jp/
以前から、独特の大画面での細密描写に魅かれていたので期待して行ったのだが、ちょっと違ったかな、と。

フィルムのカメラをプリントするとき、それなりにいろいろなテクニックがあり、それらを駆使して自らの追い求めるイメージを定着させるということをしてきた。コンピュータの画像処理もその延長上にあるといえるだろう(ただし、いずれにせよ修正をやりすぎるのは良くないと思う)。

解説を読むまで知らなかったが、グルスキーはかなり画像処理をしているという。例えば代表先の一つである「モンパルナスのアパルトマン」であるが、二つの視点で撮影した画像を合成しているそうだ。ただし、これは歪みなく撮影することがおそらく無理なので、許容範囲内と思う。
http://www.moma.org/interactives/exhibitions/2001/gursky/montparnasse_pop.html

しかし、「ライン川」のように河岸の建物を消し去ってしまうようになると、なんだか不動産広告の写真(みっともないものは消されている)とどれだけ違うのか、とも思う。たしかに本人としてはいつも川の流ればかりが目に入るので、素直にそうしたのだろうが。
http://www.tate.org.uk/art/artworks/gursky-the-rhine-ii-p78372

いろいろと見ていくと、写真作品というよりは次第に現代アート的な傾向が強くなるようで(プラダ、フランクフルト(空港)オーシャン等)、そこが良いという人もいるだろうが、やはりストレートな写真作品のほうが好みである。
例えば、
「ルール渓谷」
http://www.kgi.ruhr-uni-bochum.de/archphot/gursky/ruhrtal.htm
「エンガディン地方」
http://2.bp.blogspot.com/_Hc505W05IxM/TSCyEYyyjyI/AAAAAAAADHk/wTtJJQ5a7DU/s1600/Gursky%252C%2BAndreas%2B-%2BEngadine%252C%2B1995.jpg
あとは、北朝鮮のマスゲームやらマドンナのライブの様子やらカミオカンデやら人を驚かすのに十分な作品なのではあるが、このへんになるとなんとなくあざとさも感じてくる。

残念なのは、かつての名作がごく小さいプリントだったことだ。
「図書館」
http://www.guggenheim.org/index.php?option=com_content&view=article&id=3467&Itemid=1438
「サンパウロ、セー駅」
http://www.voyantes.net/blog/?p=187

それにしても、「99セント」を見ていると、消費社会のなれの果てというか、けばけばしさの裏のさみしさ・貧しさが見えてきて悲しくなる。
http://www.c4gallery.com/artist/database/andreas-gursky/andreas-gursky.html

ところで近年は「バンコク」等のシリーズで水面の描写に取り組んでいるようだが、これはすでにいろいろな人がやっているうえに、そこからさらに新しいところに進んでいるようでもないので、あまり面白くないです。

好きな作家なのだが、1300円はちょっと高いかなというかんじでした。写真自体にすでに十分力があり、作家が語りたいことは十分表現可能と思うのだが、コンセプト重視になってしまったように思えた。でも館内は涼しいし居心地が良いので、酷暑を避けながら頭を冷やして考えるのに良いと思う。
それとも俺が期待しすぎであったか。

福島県立美術館 プライスコレクション 若冲展

今、福島県立美術館で東日本大震災復興支援特別展として、若冲の有名作を含むプライス夫妻のコレクションが展示されている。これは、仙台、盛岡と巡回し、福島が最終会場である。プライス夫妻の御志がまぶしく見える。本当にありがたいことだと思って見に行った。
http://www.art-museum.fks.ed.jp/exhibition/jakuchu.html

いろいろ書きたいこともあるが、多くの人が書くだろうから、一つだけにしたい。
展示の最後に若冲のあの「鳥獣花木図屏風」《花も木も動物もみんな生きている》がすべての締めくくりのように展示してある。左は鳥たち、右は動物たちが、例のタイル絵のような画面・描法で屏風いっぱいに満ちあふれている。
その作品のひとつ前に、若冲最晩年の作「鷲図」(波打つ岩のワシ)がある。その鷲は雪交じりのような岩頭にとまって、鋭い眼を右に向けている。その目つきは、まだまだこれからも目標に向かって進み続けるような気迫を感じさせる。
この鷲の視線を追うと、先の「鳥獣花木図屏風」を見つめていることに気付く。鷲の目指すところはあそこなのだというように。さらによく見ると鷲図の展示されている壁面は不思議なことにフラットではなく、若干角度がつけられていることに気付く。
つまり展示室の壁面が4面あるが、展示室入ったすぐそばの左側の壁面に鷲図があり、そこに直角に位置する壁面(入ると正面のかんじ)に屏風がある。しかし鷲図の展示されている壁面はたんなるフラットな壁面ではなく、中央あたりで―\―と角度がつけられ、鷲の視線がちょうど屏風に向くように展示されていることに気付く。
たしかTVでプライス氏が、この鷲図を今回の一つの目玉だといっていたが、つまりこの展示の仕方がプライス氏の意志でもあるのだろう。この鷲のように楽園を目指せというメッセージではないかと思う。
これから行く人は、ちょっと気にかけてみてください。
たんなる深読みかもしれないが、そのように思えました。

会期は9月23日まで。JR福島駅から飯坂電鉄(福島交通飯坂線)に乗っていくのがおれの好み(下車は美術館図書館前駅)。
もう一度くらいは行きたい。

それにしても、ベン・シャーン展では、ハーバード大学はひよって写真コレクションを出さずにコピーで済ませたが、プライス氏は、原発事故まだ収まらぬ福島県に平気な顔で大事なコレクションを持ってきてくれた。ハーバード大Fogg美術館はヘソ噛んで死んだらどうだね。
http://eeldog.blog12.fc2.com/blog-entry-674.html

チェルノブイリ・イコン

たまたま図書館で「現代宗教2013 3.11後を拓く」という本を手にしたら「チェルノブイリ・イコンによる記憶の伝播と共有」(井上まどか)という文章が目に入ってきた。
以下、概要を抜粋していく。

1986年にチェルノブイリ原子力発電所の事故が発生、大きな被害をもたらして、いまだに惨禍は続いている。チェルノブイリという地名は当初から言われていたように、「黒い草」という意味で、具体的には「オウシュウヨモギ」(ニガヨモギに近い種)であり、ヨハネの黙示録中にある「第三の御使いがラッパを吹き鳴らすと、ニガヨモギと呼ばれる大きな星が落下し、川の水が苦くなったので多くの人が死んだ(大意)」で予言されていたとみなされた(そう思って当然だと俺も思う)。
事故から17年たった2003年、「リクビダートル」(原発事故処理作業員)の団体の会長・ユーリー・アンドレーエフがキエフ主教にイコン制作を打診したところ実現した。
主教が描きあがったイコンを祝福したところ、奇跡が起こったという(雲間から虹が現れ、上方を鳩が飛び、中空に太陽のある十字架が出現した)。

そのイコンはこのようなものである(ほかにもいろいろなものがある)。
http://iconreader.files.wordpress.com/2011/04/68997m.jpg
http://iconreader.wordpress.com/2011/04/06/about-the-chernobyl-saviour-icon/

図像は、画面中央より上部に中央にキリスト、左に聖母マリア、右に大天使ミカエルが配置されている。下半分には、中央にチェルノブイリの象徴とされる特徴的な枝振りの松の木が描かれ、その後ろを「ニガヨモギと呼ばれる大きな星」が落下しつつある。左側には原発事故で亡くなった人々の魂が描かれ、右側には生存者(サバイバー)たちが描かれている。生存者は消防隊員、リクビダートル、発電所の労働者、医療関係者たちである。その遠景に、石棺化されたチェルノブイリ発電所が描かれている。
中央に描かれている松の木は原子力発電所近くに実際にあり、独ソ戦に記念碑のそばにあったため、またソ連兵士がドイツ兵に吊るされたという伝承もあり、除染の際に切り倒されなかった。独特の枝ぶりはウクライナの紋章(国章)にも重ねあわされるという。

ちなみにこのイコンの模写が、福島原発事故直後の2011年4月、京都の寺田バレーアートスクール(ウクライナでチェルノブイリ支援をしてきた)に送られている。
http://www.flickr.com/photos/mofaj_tohoku/5608938391/in/set-72157626377803098
文中にも触れられていたが、松の木は一種のシンボルになることが多いらしく、陸前高田の奇跡の一本松と、タルコフスキーの「サクリファイス」の松にも触れられていた。

今日はじめて、このチェルノブイリ・イコンを見て、言い表しにくい感銘を受けるとともに、いろいろと考えることが出てきた。ただ、それはまだ整理できていないけれど。

ところで、NHK教育テレビの「チェルノブイリ 再生の歴史」で見たのだが、松は放射性物質の影響を受けやすいという。
また、原発のそばの松といえば、六田知弘さんの写真展「時のイコン」で、原発至近の楢葉町の松の写真を思い出す。

さて、福島原発事故後の東日本(日本とはいわない)で、このイコンのような、心のよりどころになりえるようなものは生まれ得るのだろうか、それともすでにもうあって、ただそれに気付かないだけなのか。
すでに、飯舘村の山津見神社は焼けてしまった
野馬追は復活したが、しかしいつもやっているわけではない。
来るべきものは新しい物語なのか、歌なのか、寺社仏閣や記念碑のような建造物なのか、どうなっていくのか、さっぱり分からない。
むしろ、このイコンを作ろうとするまでに15年以上の時間が必要だったことを考えるべきだろうか。


※リクビダートルの作業の様子については、このようなものだったらしい。一部抜粋する。
「兵士と将校たちが燃料と黒鉛を手づかみで集めている。バケツを持ち歩いて集めているのだ。それをコンテナに放り込む。われわれの車のそばにある塀の向こうにも黒鉛がころがっている。私はドアを開けて、放射線測定器を黒鉛のかたまりのすぐ近くまで突き出してみた。2000レントゲン/時だ。ドアを閉める。オゾン、焼け焦げ、埃、さらに何かが混じった異臭が鼻を刺した。その異臭は、多分、人間の焼けるにおいではないだろうか...兵士たちは黒鉛がいっぱい詰まったバケツを集め、ゆっくりと金属性のコンテナの方に運び、バケツの中身をそのなかに移している。愛する人たちよ、あなた方は何という恐ろしい収穫を集めているのか、と私は思った。」
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/GN/GN9205.html
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